ロングドライブでCX-80の奥深さにどっぷりハマる旅になった
惜しくも日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025では僅差で2位となったマツダ「CX-80」。そのCX-80をロングドライブで試乗した太田哲也さんに、CX-80がどんな人に最適なクルマなのかを語ってもらいました。太田さん的には、CX-80の魅力はやっぱりそのハートにあるようです。
大排気量エンジンの魅力を再発見!
「3.3L直6ディーゼル」というフレーズを聞くだけで、クルマ好きの胸は高鳴るものだ。最近はダウンサイジングが当たり前だけど、マツダの新しいフラッグシップSUV「CX-80」はその流れに乗らず、大排気量エンジンを積んできた。それでいて燃費を含めた環境性能も高め、堂々たる存在感を誇る3列シートのクロスオーバーSUVとして仕上がっている。
日本市場を意識して北米仕様よりもボディサイズを全長4990mm、全幅1890mmと、使いやすいサイズに収め、3列目シートの居住性と荷室スペースも確保、ゴルフバッグやベビーカーも余裕で積める設計となる。
見た目もBピラーより前は「CX-60」からの継承をうかがわせつつ、後部はCX-80らしい重厚感のある意匠を取り入れている。昨今はSUVであっても、スポーティや斬新なデザインが多数あふれる中、CX-80は威厳とクラシカルな雰囲気を併せ持つスタイルがかえって新鮮で、僕の目には格好良く映るのだ。
というわけで、マツダの新しいフラッグシップSUVがどんなクルマなのか興味があって、ジャーナリスト向けに開催された徳島から神戸へ往復というロングドライブ試乗会に参加してきた。その試乗会は、CX-80というクルマの奥深さにどっぷりハマる旅になったんだ。
3.3リッター直6ディーゼルエンジンの魅力
僕にとってCX-80の最大の魅力は何といっても「3.3L直6ディーゼルエンジン」。現代のエコを重視する流れの中では時代錯誤に感じるかもしれない。でも、オーナーになったら絶対「うちのは直6の3.3リッターだよ」なんて自慢したくなるだろう。低回転域からの太いトルクで、力強い加速をしつつ、燃費性能も高いという「エコとパワーの両立」を実現しているのがうれしい。
昔の6気筒エンジンって燃料メーターの針がガンガン落ちていくイメージだったけど、CX-80の3.3Lディーゼルは、とくに高速巡行中ではメーターが全然動かない印象だった。やはり燃料を持つ、という感覚は気分がいい。エコと力強さの両立が実現したのは、本来の潜在能力をパワー一辺倒に引き出すのではなく、もっとも効率のよい領域を使うことで環境性能を向上させる、という逆転の発想にある。
ちなみにプラグインハイブリッド(PHEV)モデルも用意されていて、こちらは2.5L 4気筒エンジンに電動システムを組み合わせた高回転域のスポーティな走りが楽しめる仕様だ。ディーゼルとPHEV、それぞれのキャラクターが明確に分かれているのも面白い。僕としては、買うとしたらやっぱり3.3Lのディーゼルがいいかな。
>>>太田哲也さんの連載「KEEP ON RACING」はこちら
CX-60から乗り心地が大幅改善
CX-80に試乗する前、僕が心配していたのは、すでに登場しているCX-60で感じた乗り心地の硬さと不安定さだった。でもCX-80ではサスペンションのセッティングが見直されて、乗り味と快適性が大幅に向上していた。
そのおかげで、徳島から神戸へのロングドライブでも疲れにくいことがはっきりと感じられた。開発者にしつこく聞いて分かったことなんだけど、具体的な見直しは、スプリングのバネレートを柔らかくして、ショックアブソーバーのセッティングも再調整。とくに縮み側の減衰力を抑えつつ、伸び側を強化したことで、振動をしっかり吸収しながらも姿勢安定性を確保する狙いだ。こうした再調整がCX-80のラグジュアリーSUVとしての完成度を高めてくれたと言える。
CX-80はどんな人に最適か?
家族とのレジャーや日常使いを考えた設計のCX-80は、たとえば奥様から「家族で乗るんだからミニバンにしてよ!」と言われつつも、「いやいや、もう少し趣味性が欲しいんだよ」「ミニバンじゃ生活感が強すぎて格好良くないよな」と感じているお父さんにピッタリだ。
CX-80は、ファミリーカーとしての実用性を持ちながらも、3.3Lの大排気量エンジンを搭載することで趣味性を保っている。クルマ好きの間では「3.3リッターなんですよ」と話題にすることもできるし、所有する喜びも感じられる。そうした「所有する喜び」が、「嫁バレ」せずに得られることがCX-80の隠れた、でももしかしたら最大の魅力ではないか。