クルマは動いてこそ価値がある
2024年12月1日にRMサザビーズがドバイで開催したオークションにおいてフェラーリ「308GTS」が出品されました。フェラーリのブランド専門家であるギヨーム・コグネ氏によると、ファーストオーナーはモナコ公国のアルベール王子。新車時はビアンコ・ポロのボディカラーにベッレ・ブルーのインテリアを組み合わせた1台でした。
スチールボディ×デタッチャブル・ルーフの308GTSとは
フェラーリが1975年のパリ・サロンで発表した新世代の8気筒2シーター・ミッドシップ、「308GTB」は、当時ピニンファリーナのチーフデザイナーであったレオナルド・フィオラバンティと、そのチームが描き出した流麗なボディスタイルによって、一瞬で世界のカーマニアの心を魅了する存在となった。
初期モデルではもともと計画されていたスチール・ボディの生産がストライキのために間に合わず、軽量なFRP製のボディが採用されたことなどは良く知られるところだが、今回RMサザビーズのドバイ・オークションに出品されたのは、一般的なスチール・ボディを持つもの。年式は1978年式で、正確にはその前年に開催されたフランクフルト・ショーで登場した、デタッチャブル・ルーフを備える「308GTS」である。
リアに横置きミッドシップされるエンジンは、2926ccの90度V型8気筒。4基のツインチョーク式ウェーバー製キャブレターとの組み合わせで、255psの最高出力を発揮した。もちろんエンジンをはじめ、組み合わされるトランスミッション/フレームのナンバーは、フェラーリ・クラシケによって、それが正確なものであることが確認されている。実際にファースト・カスタマーにデリバリーされたのも、1978年6月であることが判明している。
ファーストオーナーはモナコ公国のアルベール王子
ちなみに新車当時のこのモデル(シリアルナンバー:24821)の仕様は、ビアンコ・ポロのボディカラーにベッレ・ブルーのインテリアという、やや型破りなもの。もちろんそれを希望したカスタマーも最高級のステータスにある人物だった。フェラーリのブランド専門家であるギヨーム・コグネ氏によれば、その人物はモナコ公国のアルベール王子。その時代このモデルには「M001MC」のライセンスナンバーが掲げられていたということだ。
この308GTSはその後、南フランスのドレスメーカーに引き取られ、1983年には著名なカーコレクター、マルセル・プティジャンによって購入された。プティジャンはじつに40年以上にわたってこのシリアルナンバー「24821」を所有し続け、2022年に今回の出品者へと売却。オークションの直前にはインテリアのレザーカラーをボディカラーと良くマッチングするホワイト系で再仕上げするなどの、最終的な化粧直しが行われている。
エスティメートを下回る落札価格の理由とは
ただし長年静態保存されてきたこの308GTSは、走行前には十分なメカニカルな部分での整備が必要であることもまた事実であると、RMサザビーズはコメント。落札価格は当然その費用を考えてということになるのだが、RMサザビーズは7万ドル~8万ドル(邦貨換算約1048万円~1198万円)のエスティメート(予想落札価格)を提示。
しかしながら落札価格は5万600ドル(邦貨換算約757万円)という数字を示したまま、それ以上の入札が入ることはなかった。やはり実走行のためには、これからさらなる投資が必要になることが、その最大の理由であったのだろうか。過去のオーナーがどれほど有名な人物であっても、クルマはやはり動いてこそ価値のある商品ということが再確認できたオークションだった。参考までに現在までの走行距離は5万9820km。本格的なレストア志向をお持ちの方には、おすすめしたい1台である。