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バブリー感たっぷりなベンツ「500SEC」をガルウイングに! 80年代欧州チューナー魔改造車の現在の評価は? 当時はベースの2倍以上でした

35万ユーロ~40万ユーロ(邦貨換算約約5730万円〜約6540万円)で現在も販売中のメルセデス・ベンツ 500SEC ガルウイング」(C)Courtesy of RM Sotheby's

ガルウイング式ドアの500SECって?

2024年11月23日、自動車エンスージアストの楽園「モーターワールド・ミュンヘン」においてRMサザビーズ欧州本社が開催した「Munich 2024」オークションでは、メルセデス・ベンツ「500SEC」(C126系)に、なんとガルウイングドアを与えてしまった1980年代の魔改造クーペが出品され、開催国ドイツをはじめとする欧州はもちろん、アメリカや日本の自動車メディアも騒がせることになりました。

目立つことこそが一番の目的! ガルウイングの500SECとは……?

1980年代のヨーロッパでは、ド派手なボディワーク改装で世間の耳目を集めることを目的としていたかのごときコーチビルダーが、あたかも雨後の筍のごとく台頭していた。

メルセデス・ベンツの改造を得意とする会社に限定しても、たとえばスイスの「スバッロ」や英国の「カメレオン」など。もっとも盛んだったドイツでは「ケーニッヒスペシャルズ」や「ABC」、「ゲンバラ」などのトリックスターが続々と現れ、そして消えていった。

これらのスペシャリストたちは、ワンオフの自動車を望み、それを買う経済的な裏付けがある、そしてなにより、品格の高低を問うよりも「目立つ」ことに重きを置くタイプの顧客のために、規模は小さくとも派手にビジネスを展開していた。

ハンブルクの「スタイリング・ガレージ(Styling Garage:通称SGS)」社もまた、さまざまな選択肢を顧客に提供しているスペシャリストのひとつ。エンジニアのクリス・ハーンが創業したこのカスタマイズ会社は、ほかの誰とも被らないような「特別なクルマ」を切望する裕福な顧客に対し、彼らが望むものならばどんな内容であっても応えていた。

注目を集めた500SEC ガルウイング

彼らへの依頼内容は、内外装パーツの金メッキから大幅なボディの作り直しまで多岐にわたり、常連客のリストには中東のシェイク(首長)や西欧諸国のセレブリティ、当時の世界的インフルエンサーなどの名が列記されていたとのことである。

そんなSGSがもっとも得意としたのが、「W126」および「C126」シリーズのメルセデス・ベンツ製モデルの改造。なかでも記憶に残るのは、SECをドナー車両とした4シーター・コンバーチブルの「マーベラ(Marbella)」である。しかし、本当に注目を集めたのは「500SEC ガルウイング」。今回「Munich 2024」オークションに出品されたのは後者の「ガルウイング」で、1984年5月に改造されたものと思われる。

1950年代の名作「300SL ガルウイング」をモチーフとする、有名な跳ね上げ式ドアスタイルへの大改装にあたっては、単にドア周辺を作り直しただけにはとどまらず、ルーフおよびシルにも大幅な補強が施されていたとのことながら、それら入念なモディファイに要する費用は、スタンダードのSECでも十分以上に高額だった当時の定価8万3000ドイツマルクを、さらに倍増させることになったのだ。

>>>Gクラスを特集したメルセデスの専門誌「only Mercedes」のvol.222を読みたい人はこちら(外部サイト)

好奇心だけでは、マーケットの論理を動かすのは難しい……?

2024年11月の「Munich 2024」オークションに出品された鮮烈この上ないメルセデス・ベンツ「500SEC」は、スタイリング・ガレージ社によって「ガルウイング」仕様に改造されたC126シリーズ500SECの57台のうちの1台とされている。

クラシックなホワイトのエクステリアは、跳ね上げ式ガルウイングドアと、スプリットリムのBBSアロイホイールによって演出される、低いスタンスが特徴的といえよう。

またグレーの全面本革レザー張りインテリアは、カスタムメイドのステアリングホイールとフロアマット。そして、オートマチック・ギアシフターは隼の頭部を模した木彫りという強烈な個性とともに、あくまで好みは分かれようとも特別感を演出している。

モディファイ作業終了後には「セレクションズ・インポート(Selections Import)」社によってアメリカ合衆国に輸出され、カリフォルニア州オークランド在住のフェラーリ・コレクターのもとで登録されたことが判明している。

そののち、2010年3月に今回のオークション出品者でもある現オーナーによって母国ドイツに戻され、主にメルセデス・ベンツのスペシャリストである「アウトハウス・ヴァイカー(Autohaus Weicker)」社によってメンテナンスされてきたという。

しっかりと整備された1台だが……

車両に添付されたサービス履歴ファイルには、2010年から2015年にかけての請求書が多数含まれており、なかでもドアを開閉する油圧システムのオーバーホールにあてた「5848ユーロ」と、ヒーターとウォッシャーシステム修復費の「1132ユーロ」は、とくに注目すべきところと指摘されていた。

現オーナーよりオークション出品を委託されたRMサザビーズ欧州本社では「ノーマルの500SECの洗練されたメカニズムに加え、1980年代の過剰な要素が加わったこの現代的なガルウイングには、すべてが備わっている」という謳い口上とともに、35万ユーロ~40万ユーロ(邦貨換算約約5730万円〜約6540万円)という、かなり強気なエスティメート(推定落札価格)を提示する。

ところが、2024年11月23日に行われたオークションではビッド(入札)が最低落札価格には届くことなく、残念ながら「Not Sold(流札)」に終わってしまったのだ。

とはいえ、この種のカスタムカーが前世紀末に中古車として流通していた時代には、ベース車両と同等、あるいは原状回復のための費用を請求されかねないことから、かなり安価で取り引きされていたことをご記憶の方も多いことだろう。

昨今のヤングタイマー・クラシック人気によって、この種の改造車にも再びスポットライトが当たってはいるようだが、そのことについて正直にいってしまえば、まだまだ好奇心まじりというのが現状。今回、売り手側が望んだような価格での落札は、まだまだかなり困難ではないかと思われるのである。

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