BMW新型1シリーズがフルモデルチェンジ
BMWのエントリーモデルとして幅広い層から支持されている「1シリーズ」。4世代目へと生まれ変わった新型(F70)は、見た目だけでなく中身も大幅に進化し、日常使いにピッタリな「120」とMモデル譲りの性能を備えた「M135 xDrive」の2モデルが発売されました。1シリーズの歴史ともに振り返りつつ、新1シリーズについて紹介します。
車両価格は478万円から
BMWの主力モデルである「3シリーズ」の大型化に伴い、3ドアハッチバックの「3シリーズ コンパクト」が誕生したのがE36世代のことだ。その3シリーズ コンパクトの後継モデルとして2004年に「1シリーズ」は登場した。日常使いにちょうどいいサイズ感と、新車時価格が約300万〜500万円という手頃さもあって幅広い層から支持された。
3代目になると実用性を求めて後輪駆動から前輪駆動へと大胆にレイアウトを変更。FF化によって広く快適になった室内空間を手に入れた。一方で駆動方式が変わろうともBMWらしい走りは健在で、その人気が衰えることはなかった。
そんな1シリーズが4世代目のF70型へとモデルチェンジを果たした。新型1シリーズのワールドプレミアが2024年6月に行われ、スタンダードモデル「120」と、Mパフォーマンスモデル「M135 xDrive」が導入された。日本では2024年11月から販売を開始しており、車両価格は120が478万円、M135 xDriveが698万円(すべて消費税込)。車両価格は先代からほぼ据え置きながら、デザインとパフォーマンスは進化を果たしている。
エントリーモデルは待望の48Vマイルドハイブリッドを搭載
スタンダードモデルの120は、48Vマイルドハイブリッドシステムを採用したことが最大の注目ポイント。最高出力156ps、最大トルク240Nmを発生する高効率な1.5L直3ツインパワーターボエンジンを電動モーターがアシスト。スムーズかつ力強い走行フィールを実現している。システムトータルでの最高出力は170ps、最大トルクは280Nmとなっている。
また、120にはスポーツシートやMスポーツレザーステアリング、アダプティブMサスペンション、18インチアロイホイールなどを装備したMスポーツ仕様(498万円/消費税込)も設定し、実用性だけでなく、スポーティさをアピールしている。
外観で目を引くポイントが、新しいデザインのキドニーグリルだ。縦フィンにプラスして、グリル下部から両サイドに向かって斜めに伸びるフィンを追加することで意匠変更を実施。また、アダプティブLEDヘッドライトはシャープでスポーティなデザインに一新されており、フロントまわりにスタイリッシュさが増している。
リアまわりでは、ワイドさと力強さを強調する水平方向のキャラクターライン、立体的で力強いイメージのLEDリアコンビネーションライトが特徴。リアハッチに取り付けられているモデル名を表すバッジは「1」を大きくすることで、BMW 1シリーズであることを強調している。
BMWらしさを味わえるMパフォーマンスモデル
サーキット走行で培われた技術を取り入れ、走行性能を高めたモデルがMパフォーマンスだ。いわゆる「Mモデル」と呼ばれるMハイパフォーマンスモデルほどサーキット特化ではないが、公道では十分過ぎるほど高性能でBMWの魅力を味わうにはベストなモデルといえる。
その1シリーズ版が、最高出力300ps、最大トルク400Nmを発生させる2L直4ツインパワーターボエンジンを搭載し、4WDシステムのxDriveを採用したM135 xDriveだ。そのパフォーマンスを十全に引き出せるように、左のパドルシフトを1秒間引くことで、すべてのパワートレインとシャシーシステムを最もスポーティな設定に切り替えられるMスポーツブースト機能付きの7速ダブルクラッチトランスミッションを採用している。
4WDシステムのxDriveを採用し、フロントアクスルには機械式リミテッド・スリップ・デファレンシャルを組み込んでいる。そして運転スタイルと路面状況に応じてダンピング特性を調整するアダプティブMサスペンションを装備して、駆けぬける歓びを体現している。なお、M135 xDriveには、上級モデルの「M3」および「M4」で採用のテクノロジーを受け継いだMコンパウンドブレーキ(グレーハイグロスキャリパー)もオプションで用意している。
この新型1シリーズには、最先端の先進安全機能ドライビング・アシストを搭載していることも見逃せないポイント。ストップ&ゴー機能付きのアクティブクルーズコントロール、レーンチェンジウォーニング(車線変更警告システム)、レーンディパーチャーウォーニング(車線逸脱警告システム)、衝突回避・被害軽減ブレーキ(事故回避ステアリング付き)、クロストラフィックウォーニング、ペダル踏み間違い急発進抑制機能などを標準装備している。ハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能は120にはオプション設定され、M135 xDriveは標準で装備される。
AMWノミカタ
BMWのなかでも1シリーズのようなエントリーグレードを購入する人はコンサバティブな人が多いことを、BMWは十分にわかっていると思う。現在の1シリーズの直接的な始祖といえば、1990年代にE30のシャシーにE36のデザインをまとったE36コンパクトであろう。FRということと価格面で人気を博したモデルだ。その後継モデルとなるE46 318tiは、3シリーズとはまったく異なるフロントデザインが不評で販売面で苦戦した。Cセグメントにマッチする愛嬌あるフロントマスクであったが、BMWを求めるカスタマーは望んでいなかったということだろう。
新型1シリーズには、悪目立ちするようなキドニーグリルもなければ、平面的な面構成や革新的なヘッドライトのデザインはない。だれもが思い浮かべるBMWというイメージの延長線上にあるデザインであり、そしてカッコいいと思わせる雰囲気を十分にまとっている。もういまさらFRでなければならないとこだわる人も少ないだろう。
だれもが求めるBMW像を形にして、なおかつ現実的なプライスで登場した新型1シリーズが現在の日本市場でどれほど受け入れられるのか、楽しみである。