納車されたばかりのボライドの潜在能力を試す
8LのW16クワッドターボエンジンを搭載し、1600psを発揮するブガッティのサーキット専用モデル「ボライド」のデリバリーが2024年末に始まり、1号車がアメリカに納車されました。このクルマのためにブガッティはサーキットセッションを準備していますが、待ち切れない顧客が自らサーキットを予約し、このモデルを走らせました。そのドライバーとクルマが一体となった貴重な1日までのプロセスを紹介します。
ひとりの熱心なレーサーが自らサーキットを予約し走行
ブガッティ「ボライド」は、モルスハイムから生まれた唯一の、現代的なサーキット走行に焦点を当てた傑作であり、ブガッティが並外れた体験を提供する揺るぎないコミットメントを実現したモデルである。ボライドを手に入れた顧客の多くは、ブガッティ主催の2025年のサーキットの限定走行セッションを心待ちにしているが、あるひとりの熱心なレーサーは待ちきれないでいた。納車されたばかりのボライドの潜在能力をできるだけ早く引き出したいという思いに駆られ、彼はスリルを味わうために自らサーキットを予約したのである。
納車後、初めて自らのブガッティをサーキットに走らせた米国の顧客は、F1のカレンダーの中でも最も名誉あるレース会場として知られるサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)に精通していた。しかし、彼にとってこれは単なる納車セレモニー的な周回ではなかった。それはブガッティが生み出したサーキット専用ハイパースポーツカーのパワーと精度を、モータースポーツの豊かな伝統にインスパイアされたそのクルマに直接体験させるため、ブガッティの限界に挑む瞬間だったのだ。
最高のパフォーマンスを発揮できるよう入念にチェック
ブガッティのエキスパートによるカスタマーサービスチームは、このクルマが舗装道路を走るずっと前から、あらゆる細部にわたって万全の準備を整えていた。前日の車両引き渡しと技術説明では、全長5.513kmのサーキットで想定されるすべてのケースに備え、顧客はクルマのあらゆる特性を学んだ。20の難関コーナーを持つCOTAは、最も腕の立つドライバーでもその力量を試されることで知られており、この準備は、忘れがたいアドレナリン全開の1日を前にオーナーの興奮をさらに高めた。
オーナーの期待が高まるなか、安全と楽しさを確保するために、その日のスケジュールは綿密に進行した。2周のウォームアップ走行で、ボライドの並外れたハンドリングと性能を確かめたのち、クルマは一旦ピットに戻され、最終チェックが行われた。チームは、タイヤの空気圧からオイルレベルまで、あらゆる細部が最高のパフォーマンスを発揮できるよう入念に確認した。
顧客のボライドは、ブガッティのレースの歴史を体現
準備万端整った「ボライド」で、オーナーはコースに出て12周にわたって、このクルマの潜在能力を最大限に引き出した。雨はさらなる難題をもたらしたが、興奮は増すばかりだった。ドライバーは自分自身と「ボライド」を限界まで追い込み、最高速度333km/hを記録した。オーナーにとって、それは単にスピードを追求することではなく、偉大なるマシンと一体となる感動であり、ブガッティのエンジニアリングの真髄を体感する機会であった。最も過酷な状況下でも、ボライドは比類なき性能で、ドライバーの体験を誰も想像できないレベルにまで高めることができることを証明したのだった。
フランスのレーシングカーを象徴するブルーに仕上げられ、車体の下部全体にノクターン・ブラックカーボンを配するなど、大胆なアクセントが施された顧客のボライドは、ブガッティのレースの歴史を体現している。そのツートーンのデザインは、伝説のレーシングカーである「タイプ35」をはじめとする、ブガッティの過去と現在のアイコンからインスピレーションを得ており、ブランドのモータースポーツにおける不変の伝統と最先端のデザイン哲学への敬意を表している。
特注の構成は、カーボン製フェンダー、ウイング、スプリッターから大胆な赤いテールフックまで広がり、すべてがボライドのサーキット走行に重点を置いたDNAを強調している。
コクピット内では、フレンチレーシングブルーとベルガブラックのアルカンターラ、そして磨き上げられたアルミニウムのアクセントが調和している。「エキップ・カーティス」と刻まれた特注のトレッドプレートが個性を添え、エットーレ・ブガッティの有名なレーシングチーム「エキップ・ブガッティ」を称えたものである。
AMWノミカタ
ボライドの商品化は2021年に発表されたが、3年後の2024年11月に予定通り1号車がデリバリーされた。400万ドルと発表された価格も驚きであったが、1450kgという車重や0-100km/h加速2.2秒というパフォーマンスにも驚かされた。3年も待たされたオーナーが自らサーキットを予約してでも一刻も早くこのモデルを体験したいという気持ちになることは十分に想像できる。
入念な納車説明とブリーフィングの後に顧客はステアリングを握るが、待ち焦がれたマシンと一体となる感動やエンジニアリングの真髄を味わえたのではないだろうか。320km/hで発生するフロント800kg、リア1800kgの強力なダウンフォース、1kg/psを切るパワーウェイトレシオ、1600Nmを発生するトルク感など、それは全世界で40人だけが味わえる特別な幸せである。
余談ながら、ボライドの全高は995mmで伝説のモデル、タイプ35と同じらしい。このあたりのこだわりもいかにもブガッティらしくてステキである。