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トヨタ「ハイエース」をなぜ左ハンドル化? 逆輸入ではなく右ハンを改造して公認車検を取得…町工場が魅せた職人技を紹介します

トヨタ ハイエース:左ハンドルへと変更されたコクピット。ダッシュボードだけではなく、シフトやエアコンパネルなども違和感なく左ハンドルに合わせて位置を左右変更している

左ハンドルに憧れるオーナー必見! 公認ワンオフカスタム

左ハンドルが好きな方必見の希少カスタム車が、2024年10月5日〜6日に熊本県上益城郡益城町にあるグランメッセ熊本で開催された「九州カスタムカーショー2024 in 熊本」で展示されていました。そのクルマは、トヨタ「ハイエース」。フィリピン、インドネシア、タイといった東南アジア諸国などでも販売されているため、正式な左ハンドルの輸出仕様は存在します。しかし、このハイエースは、国内正規仕様の右ハンドル車を左ハンドル化!? さらに公認車検を取得したという、驚くべきワンオフカスタム車でした。

正規左ハンドル仕様が国内で登録できない理由とは

トヨタ「ハイエース」は、フィリピン、タイといった東南アジアやアフリカ諸国へ輸出されている。つまり正式に左ハンドル仕様が存在し、それを日本国内へ送りこめば逆輸入車として左ハンドル仕様のハイエースが手に入るはず。

ところが、実際はそう簡単にはいかない。じつは、日本と諸外国との間には自動車に関連する輸入協定が結ばれており、たとえばEU諸国とはEPA(日EU経済連携協定)、アメリカ、メキシコ、カナダとはUSMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)といったものが存在する。これらの協定が結ばれている地域であれば逆輸入からの国内登録は難しくないのだが、東南アジアのように日本との間に協定が無い地域の車両の登録は、ほぼ不可能なのだ。

仮に登録しようとすると、日本国内の安全基準に適合しているかどうか、衝突試験などを受けて実証しなければいけない。それをクリアするには膨大な費用と手間がかかるため、そこまでして左ハンドル仕様のハイエースを手に入れようとする人がいない、というのが実情なのだ。

逆輸入車ではない!? 驚きの公認車検カスタム

しかし世の中には物好きな方が少なからずいて、「誰も乗っていないクルマに乗りたい」という需要がある。それならば公認車検を取得できるように製作しよう! という供給側がいて、その市場原理が合致した結果、右ハンドルの国内仕様を左ハンドル化して、公認車検を取得したハイエースが存在するのである。

製作は、香川県三豊市にあるマナベモータースだ。同社代表の真鍋貴行さんによると、

「うちは町にある普通の整備工場で、カスタムショップでも加工屋でもないのです」

とのこと。むしろ公認車検を取得することによって、整備工場としての技術と車検に対する正しい知識を持ち合わせているというアピールを兼ねて作られている。

実際、同社が今までに製作した左ハンドル仕様は、スズキ「エブリイ」「ハスラー」「ジムニー」、トヨタ「アルファード」、ダイハツ「ハイゼット」など。いずれも可能な限り純正部品を使用。改造申請後に書類審査を通過した後、車両持ち込み確認検査などを実施して、公認車検を取得している。

気になる改造ポイントやその金額は?

このハイエースも当然だが公認車検を取得することを目標に製作。そのため、左ハンドル化に合わせて、ステアリングギアボックスであるラック&ピニオン、ダッシュボード、コントロールパネル、ワイパー、ウインカー&ワイパースイッチ、ブレーキペダル、ドアミラーなどを変更している。

ダッシュボードやコントロールパネルは右ハンドル仕様を切り刻み、左右を入れ替えて装着。またシフトレバー、エアコン操作スイッチなども左の運転席から使いやすいように、位置が変更されている。ワイパーの向きも変わるのはもちろんだが、真鍋さんはウインカーレバーとワイパーレバーの位置も入れ替えるほどのこだわりを披露。

さらにアクセルとブレーキペダルが左側に移動しているため、マスターバッグの位置やその移設にまつわるすべての配管、エアコンなどの部品といった、目に見えない部分も変更している。

なお、これらの改造費の総額は143万円(車両価格別)。安全実証試験料金の16万5000円は含まれていないが、その労力を考えれば決して高額ではないか。人とは違った車両が欲しい。左ハンドルにこだわりたい。そんなあなたの欲望を満たす公認左ハンドル仕様はいかがだろうか?

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