クルマにはまるきっかけは人それぞれ
カーライフというものは、オーナーの数だけさまざまなストーリーが存在します。今回紹介する小柳さんは、知り合いのクルマ屋さんで眠っていたトヨタ「スポーツ800」をひょんなことから譲り受けたことが、クルマ趣味の深みにハマるきっかけでした。事故からの復活。突然の出会いから始まったヨタハチを修理する楽しみ。旧車に興味がなかった小柳さんがとことんハマってしまったその理由とは?
はじめは気乗りしなかった旧車の世界
2024年10月27日に熊本県阿蘇市阿蘇門前商店街で開催された「トヨタスポーツ800還暦祭 九州大会」の世話人としてとりまとめていたのが、トヨタ「スポーツ800」のオーナーの小柳さんだ。参加者の皆さんとの連絡やさまざまな取り決めや当日の進行など、愛車談義に華を咲かせる余裕もなかったのでは? と思うほど、裏方に徹していたのが印象的だった。
「私がヨタハチを手に入れたきっかけは、知り合いのクルマ屋さんから“車検代だけでいいから引き取ってくれ”と相談されたことがはじまりです。正直、ヨタハチに対してそこまで思い入れが強かったわけではないですし、古いクルマの修理は手間がかかりそうと思っていました。気乗りしないまま、なんとなく購入してしまったのです」
しかし、小柳さんの心の雲行きが変わるまでに、時間は一切必要なかった。その時の気持ちを小柳さんはこう語ってくれている。
「エンジンを始動させるためにキャブレターにガソリンをさしてキュルキュルとスターターを回した瞬間に、このヨタハチにハマってしまったのです」
入手からたった4カ月で事故に遭遇
こうして始まった小柳さんとヨタハチのカーライフは、たった4カ月で暗礁に乗り上げる。理由は、玉突き事故だ。ボロボロになってしまった愛車だったが、そこから1年ほどの時間をかけて修理を敢行。その嬉しさから、ヨタハチの沼にますますハマっていく小柳さんに、ある出会いが待ち構えていた。
「私がヨタハチで街中を走っているときに、見ず知らずの方に追い駆けられて、交差点で声をかけられたのです。整備や修理、塗装仕上げのことなど、まるで尋問されるように根掘り葉掘り聞かれました。なんだろうと思っていたら、突然その方が“うちにある1台、あげるからおいで!”と言うのです」
その個体は、事故でボロボロの状態で書類もなかった。それでもありがたい話だったので、小柳さんは部品取り車として譲り受けて保管していた。その期間はおよそ10年に及ぶという。ところがある日、その前オーナーから連絡があった。大晦日に届いた吉報は、なんと「書類を見つけた」という知らせだった。
勘の良いAMW読者の方なら、すでに察しがついているだろう。このシルバーの個体が、小柳さんにとっての2台目のヨタハチ。街中での突然の声かけから無料で譲り受けて、10年間不動の後に復活したクルマなのである。
「ボディの状態が酷すぎて、鈑金屋さんに断られるレベルだったのです。知り合いの紹介でなんとか請け負ってくれる方に依頼し、7年ほど預けたあと約2年前に完成しました。エンジンなどは素人の私が手探りで作業して、なんとかオーバーホールしました。自分でこのような作業まで手がけるようになるとは思いもしなかったです」
旧車を拒否していたほどの小柳さんのこの変わりように驚くのは無理もないだろう。しかし、ボロボロのヨタハチを2台も復活させたその過程に、小柳さんがハマった理由が隠されていた。
「サビ落としなどに集中して作業していると、どんどん心が無になれる感覚があるのです。嫌なこともすべて忘れることができる。それはまるで座禅を組んでいるのと同じような心境なのかなと思いました。愛車のサビ落としが、私の心のストレスを無くして、綺麗にクリアにしてくれるのです。だからやめられないのでしょう」
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)