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ベントレーのマリナーが中国文化を表現したら…王希孟の「千里江山図巻」の精神性を巧みに取り入れた「インスパイアード・バイ・チャイナ」誕生!

ベントレー インスパイアード・バイ・チャイナ:王希孟(おうきもう)が描いた「千里江山図巻(せんりこうざんずかん)」を表現している

中国の文化や精神性を表現した「インスパイアード・バイ・チャイナ」

2025年2月13日、ベントレーは中国文化の芸術性と永遠の気品を讃える「インスパイアード・バイ・チャイナ」を発表しました。マリナー・ビスポーク・スタジオが監修した今回のこのコレクションが中国のどんなものからインスパイアされたのか見ていきます。

カラフルな鯉がインテリアを彩る

文化的なインスピレーションに富んだ8台のベントレーのコレクションは、手作業によるオーダーメイド仕様で、色彩、テクスチャー、デザインのエレガンスを組み合わせて製作された。

このコレクションでは、「ベンテイガ エクステンデッド・ホイールベース(EWB)」「フライングスパー」「コンチネンタルGT」が、動物や有名な芸術作品、象徴的なオブジェからインスピレーションを得て製作された。

古代中国では、鯉は勇気と幸運をもたらすと信じられており、その鮮やかな色合いは深く愛されている。この鯉をテーマにした刺繍やインテリアデザインを検討する際、鯉が時計回りに泳ぐ必要があることが判明した。それは、幸運、バランス、忍耐といったテーマを体現する象徴的な意味と信念を持っているからだ。

中国では一般的に「6」という数字は縁起が良いとされているが、これは「6(liú)」が「流(liú)」と同じ音であり、なめらかさや成功を連想させる。これによりインテリアには6匹の鯉が細かく描かれ、各シートには4匹の鯉が刺繍され、2匹はウエストレールに重ねられている。

助手席のフェイシアとトレッドプレートに施される「さざ波」は、鯉が動くときに作り出す穏やかな水の波紋を模してデザインされている。さざ波を表現するゴールドのアクセントは、ゴールドのリアピラー・エクステリアバッジとゴールドのトリムインサートによって仕上げられた。

天才画家・王希孟が描いた「千里江山図巻」を表現

ほかにも王希孟(おうきもう)が描いた「千里江山図巻(せんりこうざんずかん)」からインスピレーションを得たモデルが製作された。千里江山図巻は、宋の時代(12世紀)に描かれた中国の有名な山水画である。王希孟がわずか18歳のときに完成したこの巨大な巻物は、全長約11.9mにも及ぶ。

北京の故宮博物院に収蔵されているこの山水画には山、川、谷の壮大な風景が描かれ、自然と人間の調和が表現されている。細部まで緻密に描かれた風景は、さまざまな木々や船、人物によって引き立てられ、見る者を奥へと誘う。王希孟は「青緑山水」と呼ばれる緻密な技法を用い、鮮やかな青と緑を使って奥行きと雰囲気を作り出している。千里江山図巻は中国美術の傑作のひとつとされ、宋時代における山水画の頂点を表している。

千里江山図巻から着想を得たフライングスパー アズールには、刺繍やオーバーレイで細部に至るまでデザインが反映され、ブルーのキャビン内に芸術的な要素が散りばめられている。

如意から着想を得たフライングスパー

もうひとつインスパイアを受けたモチーフは、「如意(にょい)」である。如意とは、幸運、繁栄、願いの成就を象徴する中国の伝統的な装飾品である。笏(しゃく)や杖の形をしたものが多く、曲がった雲のような頭部と長く真っ直ぐな柄が特徴だ。頭部には複雑な彫刻が施されたり、宝石がはめ込まれたりすることが多く、木材、翡翠、金属などさまざまな素材から作られる。

如意を表現したフライングスパーには、3色のバリエーションが異なるモデルが製作された。すべてのモデルに複雑な刺繍が施され、デコラティブ・オブジェが付属する。

ほかの「インスパイアード・バイ・チャイナ」は、ドラゴンや獅子が舞う姿、パンダが遊ぶ姿などが描かれている。マリナーはクラフツマンシップとキュレーション能力を駆使し、中国限定のインスパイアされたオーダーメイド・コレクションを提供した。

AMWノミカタ

先日、ロールス・ロイスも中国の顧客とともに龍をモチーフにした見事なビスポークモデル「ファントム ドラゴン」を製作した。今回のベントレーのコレクションは顧客とではなくマリナーが監修した中国向けの特別な装飾となるが、見た目の派手さや新素材の採用などではなく、中国の文化や精神性を表現している点が特徴である。

アズールのテーマであるウェルビーイングを道教の哲学のもと、静寂と均衡の理想を体現した王希孟の「千里江山図巻」で表現している点などはじつにインテリジェントな発想だと感じる。「鯉」も「如意」も「獅子」も「ドラゴン」もおめでたいもの、もしくは幸せの象徴として描かれるのは十分に理解できる。しかし「パンダ」をフロントフェイシアに描きたいという中国人がどれだけいるのかは疑問が残る。しかしこれもマリナーの遊び心のひとつなのだろうか。

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