クルマもオーナーも1993年生まれ
昨今では「クルマ好きといえば年寄りばかり、若者はクルマに興味を持たない」などと語られることも多いですが、恒例の東京オートサロンや大阪オートメッセなどのイベントには、学生などの若者や子ども連れのファミリー層も数多く来場し、またヒストリックカーのイベントなどでも若いオーナーを見かけることは決して珍しくはありません。今回紹介するトヨタ「サイノス」乗りの清水 聡さんもまた、1993年生まれの「ヤングタイマー乗り」でした。
バブル生まれのお洒落なクーペ
撮影現場に現れたのはトヨタ「サイノス」。これが清水 聡さんの愛車だ。1993年式というから、1991年から1995年にかけて生産された「EL40型」と呼ばれる初代サイノスの、マイナーチェンジ後のモデルである。
「北米の女性秘書がプライベートのアシにするようなお洒落なクルマ」──そんなイメージで企画された小型の2ドア・ノッチバック・クーペで、ベースとなったのはトヨタのロワークラスを担っていた「ターセル/コルサ/カローラII」だ。クルマのそのもののキャラクター設定はもちろん、「友達以上恋人未満」という当時のCMキャッチコピーまでもが、いかにもバブル景気当時の時代の空気を感じさせる。
初代サイノスがデビューした頃、1980年代末から1990年代初頭にかけて生まれた国産車を思いつくままに列記すれば、日産R32型「スカイラインGT-R」にZ32型「フェアレディZ」、ホンダ「NSX」に「ビート」、ユーノス「ロードスター」にアンフィニ「RX-7」、三菱「GTO」にスズキ「カプチーノ」と、今なお高い人気と知名度を誇るスポーツカーや高性能GTが居並ぶ。
「古いクルマに乗るなら今のうち」と考える清水さんだが、それらバブル期に生まれた錚々たる同世代の「旧車」たちの中で、あえてトヨタ サイノスを手に入れたのは何故だろうか。
祖父の4代目コルサを借りて乗っていた
「もともとクルマは好きだったので、18歳になってすぐにマニュアル免許を取りました。で、最初に買ったのが三菱 FTOでした。その次に手に入れたのはNBロードスターです」
と、愛車歴を聞けば王道ヤングタイマー・正調スポーツ&GT路線。もともと硬派な路線からスタートしつつも、それらとはいささかテイストが異なるように思える現在のサイノスに至った、そのココロは。
「じつは昔、祖父が4代目コルサに乗っていたんですよ。自分のクルマを買う前には、よくそのコルサを借りて乗っていました。古い実用車ではありましたが、やはり現代のクルマに比べれば圧倒的に車重が軽いんで、走っていて心地いんですよね」
と、そんな祖父のクルマの思い出を反芻するうちに、清水さんはL4#型ターセル/コルサ/カローラIIにまた改めて乗ってみたいと考えるようになったのだった。
兄弟車との乗り味の違いを楽しむ
「そんなわけでL4#型コルサがずっと気になっていたのですが、そんな時に出会ったのがこのサイノスでした。いまから3年ほど前のことです。基本コンポーネントはL4と共通なので、乗り味の比較という点でも興味があって手に入れることにしました。もともとスポーツカーっぽいクルマに乗ってきたので、2シーター・クーペにも馴染みがありましたし」
サイノスには2種類のグレードが存在し、それぞれα(アルファ)とβ(ベータ)と呼ばれていたが、清水さんのサイノスは上位モデルのβである。
「カタログの数値上ではこちらの方が馬力がありますが、クルマのバランスという点からはベーシックなグレードの方が乗りやすいかもしれせんね」
と語る清水さんは、平成生まれの頼もしきクルマ好きなのである。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)