パンクなどのタイヤトラブルの救世主になるスペアタイヤを考察
クルマを運転するとさまざまなトラブルに遭遇します。なかでも多いと言われているのがタイヤに関するトラブルです。走行中にタイヤが破裂してしまう「バースト」や、釘などが刺さったことにより徐々に空気が減少していく「パンク」などがあります。そんなタイヤのトラブルの際に使われる、スペアタイヤについてと、その交換方法を伝授します。
スペアタイヤってそもそも何?
冒頭でも触れたが、スペアタイヤとは走行中にパンクやバーストが起きた際に使用する代替用タイヤで、トランクや車体下などに装備されていることが多い。スペアタイヤはクルマに標準装備されているタイヤと同じサイズなので、交換後はなんの問題もなく通常走行を継続することが可能だ。
だが最近のスペアタイヤ装備車の多くは軽量化やラゲッジ内の省スペース化などを目的に、テンパータイヤ(テンポラリータイヤ)の装備が主流となっている。テンパータイヤとは、通常のタイヤに比べてサイズが小さく、幅も細い。ノーマルタイヤと違い硬いゴムを採用しているので、ノーマル同様の走行が可能とされているが、あくまでも応急用なので最高速度は80km/h、走行可能な航続距離は100kmまでという制限があり、速やかに新しいタイヤへの履き替えが必要だ。
スペアタイヤを最近見なくなった背景とは
昔はほとんどのクルマに装備されていることが当たり前だったスペアタイヤだが、最近では特定のクルマを除き、スペアタイヤではなくパンク修理キットの搭載が当たり前の時代へと変化してきている。なぜこのようになったかというと、重くてかさ張るスペアタイヤをなくすことで、荷室をさらに広く確保できることや、軽量化することによって燃費が向上できる利点がおもな理由として挙げられる。
また日本のように比較的道路環境がよい国では、そもそもパンクすることが少ない。ひと昔前と比べるとロードサービスもはるかに充実しているので、タイヤのトラブルが起きたとしてもドライバー自らがスペアタイヤへ交換するなんてことが減り、一度も使われることなくそのまま廃棄されてしまうというパターンが非常に多いのだ。
昨今の時代背景や環境保護の観点から考えても、ごくごく自然なことなのだろう。もちろん今でもスペアタイヤを標準装備するクルマがないわけではない。
また、国産車での採用は少ないものの、一定の速度と距離であればパンクしていても走れてしまう万能なランフラットタイヤが輸入車を中心に標準採用されていることもある。もちろんパンク修理キットが主流といっても、国産車ならメーカーオプションでスペアタイヤを購入することが可能で、パンク修理キットでは不安な方やロードサービスを使わず自分で交換したいという場合でも安心して使用することができる。
スペアタイヤの取り付け方(タイヤの交換方法)
【タイヤ交換の手順01/まずは安全な場所にクルマを停める】
パンクなどのタイヤトラブルが起きた場合、後続車からよく見える安全な路肩にクルマを停めることが必要だ。周囲の迷惑や2次トラブルを防ぐためにも気をつける必要がある。当然、坂道や砂利などのある不安定な場所は避け、平らで安定した場所で作業を行うことが必須だ。
【タイヤ交換の手順02/クルマが動かないように対策する】
スペアタイヤの交換中にクルマが動いてしまうなんてことがあってはならない。AT車では必ずシフトレバーはパーキングに入れておき、MT車の場合はギヤを必ず1速(上り坂)またはリバース(平地、下り坂)に入れておく必要がある。また必ずパーキングブレーキをかけて、交換するタイヤの対角線上の車輪に輪留めをしてクルマが動かないことをしっかり確認しておく。当然だがエンジンの停止も忘れてはいけないポイントだ。
【タイヤ交換の手順03/非常停止板や非常停止灯などで後続車に危険を知らせる】
クルマを停車させたら、後続車に存在を知らせるために非常停止板や発煙筒をクルマ後方に設置しなければならない。作業中に後続車から追突されないように対策を行うことで、ドライバー自身の身を守ることはもちろん、二次被害を軽減することができる。
【タイヤ交換の手順04/タイヤに装着されたホイールのナットを緩める】
タイヤ交換の作業では、怪我をする恐れがあるので素手ではなく軍手を用意しておくと汚れも防止できるのでおすすめだ。スペアタイヤの近くに車載しておくと良いだろう。作業の準備が整ったらジャッキアップの前にすべてのホイールナットを緩めておく。先にジャッキアップしてしまうとタイヤが空転しまいナットを緩めることができないためだ。通常のタイヤ交換と同様、対角線上に緩めていくのもポイントのひとつだ。
【タイヤ交換の手順05/ジャッキを使って車体を持ち上げる】
車体下に記されたジャッキアップポイントに正しくジャッキを当てて、車体を上げる。ジャッキアップポイントとはクルマとジャッキの接続ポイントのことだ。通常は各タイヤからボディ中央部寄りの車底部端にあるとされるが、トラブルが起きる前に一度使い方を確認しておくことをおすすめする。
わからない場合は整備マニュアルやディーラーなどで確認しておけば、万一の場合もスムースに作業できるので安心だ。またクルマに装備されている車載ジャッキ(パンタジャッキ)を使用する人が大半だろう。こちらもコンパクトで誰でも簡単に車体を持ち上げられるようになってはいるが、一度使い方を確認しておくといいかもしれない。無事に車体が上がったら緩めたナットとタイヤを外す。外したタイヤは車体下に入れておくと、ジャッキが倒れて車体が落ちてきた場合の事故を防ぐことができる。
【タイヤ交換の手順06/スペアタイヤを取り付ける】
スペアタイヤを取り付けるのだが、一気にナットを締めるのではなく何回かに分けて仮締めをしていく。外すときと同じで1本仮締めをしたら対角線上のナットを締めていく。これを2〜3回繰り返しガタつきがなくなるまで締めたら、ジャッキを降ろしてタイヤを地面に接地させ、最後に本締めする。
パンクなどの緊急事態では、トルクレンチを車載してない限り使うことはできないが、ホイールのナットは適正の締め付けトルクで作業を行う必要がある。近所の整備工場やガソリンスタンドなどで確認してもらうと良いだろう。
パンク修理キットの使い方
【パンク修理の手順01/クルマを安全な場所に停車】
スペアタイヤの交換同様、パンク修理キットを使う場合であっても、まずは安全な場所にクルマを速やかに停車させる必要がある。もちろん後続車や周りの迷惑にならない路肩などに停車する必要がある。輪留めなどの手順も同じく必要となるので注意が必要だ。
【パンク修理の手順02/後続車に危険を知らせる】
こちらもスペアタイヤ交換前と同じで、安全な場所に停車することができたら発煙筒や非常停止板を使い、後続車に対して自分のクルマが停止していることを知らせる必要がある。さらなるトラブルを防ぐために必ずこの作業を怠ってはならない。
【パンク修理の手順01/パンク修理キットを準備する】
スペアタイヤ交換と同じで、安全な場所にクルマを停車し、発煙筒や非常停止板を使い、後続車に対してクルマが停止していることを知らせる。その後、作業するための十分なスペースが確認できたらパンク修理キットを用意する。
通常だとスペアタイヤが収納されているラゲッジ下に車載されている。またパンク箇所を見ておくことも大切だ。ここで注意しなければならないのがトレッド面であっても穴の大きさによっては修理不可の場合があるのと、サイドウォールに問題がある場合はパンク修理キットでは対応することができない。
その際はロードサービスの手配が必要だ。またパンク修理キットには修理剤自動注入タイプと手動注入タイプが存在するので、車載する修理キットがどちらのタイプなのか事前に把握しておくと万一の場合も慌てなくて済む。一度チェックしておくことをおすすめする。
【パンク修理の手順02/修理剤をセットして注入する】
パンク修理キットは、自動型も手動型も使う前に修理剤をよく振ることが必要だ。また刺さっている異物は触らずそのままにしておくこと。どちらもエアバルブキャップを外すとこまでは同じなのだが、手動型の場合はバルブコア(通称:ムシ)も外してタイヤ内の空気を抜く。空気が抜けたら修理剤のボトルに注入ホースを取り付けて、エアバルブに差し込めばセット完了だ。自動型は修理剤をコンプレッサーに直接取り付けるようになっている。メーカーなどによって取り付け方法も違うため、事前に取扱説明書をチェックしておくことが大切だ。自動型の場合はコンプレッサーの電源がオフの状態でエアバルブにセットすればOK。
手動型の場合はボトルを逆さにして、ボトルを数回潰し中身をすべて注入する。使用後のボトルと注入ホースは取り外さないことをオススメする。ボトルを収納する際に修理剤がこぼれる可能性があるので、ホースにウエスなどを詰めておくといい。
付属されている新品のバルブコアを取り付けたら、電源がオフの状態のコンプレッサーをエアバルブに繋ぐ。コンプレッサーの電源は車内のアクセサリーソケットに差し込めば使用できる。電源をオンにしたら指定の空気圧までエアを充填する。
自動型の場合は空気と一緒に修理剤が注入されるので、コンプレッサーをエアバルブにセットしたあとは手動型と同じく指定空気圧までエアを充填すればOKだ。それぞれコンプレッサーを外したらエアバルブキャップを締め、5kmまたは10分間のチェック走行を行う。この時点では応急修理が確実にできたか不明なので、運転には十分注意が必要だ。
【パンク修理の手順04/確認走行を終えたら再度空気圧をチェックする】
チェック走行を終えたら、再度安全な路肩などにクルマを停車し安全確保を行う。ここでパンク修理作業に問題がなかったかチェックするために空気圧を確認。この際に空気圧が130kpa以上であれば応急修理ができたことになる。ただし、それ以下だった場合は修理キットでは対処できないものと判断しロードサービスに依頼しよう。
また応急修理ができた場合であっても、速やかに新しいタイヤに交換しなければならないので、その足で整備工場やタイヤ販売店に向かいたい。走行する場合は80km/h以下で運転しなければならないので、こちらも注意するべきポイントだ。
まとめ
走行する上でタイヤトラブルは避けては通れないもの。時代の流れとともに変わってきたスペアタイヤ事情だが、どれも一長一短。安心感や使い勝手など自分が何を重要視するかによって選択する時代なのだ。クルマの使用頻度や使い方などを考えた上でベストな選択をし、万が一トラブルが起きた際も慌てずに対処できるようにしておきたい。