S500。イギリスのスポーツカーを参考にし、幌もイギリスから輸入したと言われている。「スカーレット」と呼ばれるボディカラーも革新的で、当時は法律で規制されていたため、ホンダが初めて国内での使用許可を勝ち取ったカラーだった
車体の高さを抑えつつ最低地上高を確保するフレーム形状を採用。チェーン駆動のメリットは、デフが後輪軸より前方に設置されるため、トランクルームが広くなる。スペアタイヤは、トランクのフロアに搭載されている
サイドビューを見るとヨーロッパのコンパクトオープンスポーツのようなフォルムだ。ソフトトップを被せた姿は、まさにイギリスのライトウェイトオープン2シーターを彷彿とさせる。ホイールは小さなボディながらも13インチと大径タイプを装着
フロントウインドウの真ん中を上下につなぐのはルームミラーの支柱。つぶらな瞳が印象的なヘッドライトにはスタンレーの文字も見える
Sシリーズはリヤビューが見分けやすい。S500はかわいらしい丸いテールランプとデザイン性の高いバンパーが目を引く
S600はファストバックスタイルが特徴的なクーペへと進化。ラゲッジ容量を確保し、マルチユースを目指した
リアハッチゲートの採用は時代を先駆けており、発売すぐにヨーロッパでは人気が急上昇した
キャンバストップの代わりに被せるハードトップの設定もあったが、S600ではクーペということでファストバックボディを新設定。ドアはサッシュ付き
S600になり、フロントグリルはより細かく刻まれ、バンパーはナンバーを避けて大きくたわませている。S500でつくりあげたイメージをうまく踏襲したデザインだ
カタログでも荷室スペースの有効性を主張し、トラックやバンと肩を並べるビジネスカーとしての自信がキャッチコピーからもうかがえた
大きな期待を一身に受け、満を持して登場したのがS800。本田宗一郎の情熱がほとばしるライトウェイトスポーツの傑作として君臨した
初期のチェーンドライブ仕様ではボディカラーにはSシリーズの象徴でもあるスカーレットのほか、こちらのゴールデンイエローも人気を博した。リジッドアクスル仕様ではアイボリーホワイトが加わる
S500と並べるとサイドビューはよく似ているが、ショルダーの高さやホイールデザイン、ボンネットの膨らみでS800とわかる
S800は、国内仕様と輸入仕様ではグリル両脇についているウインカーランプの大きさが異なる。写真は国内仕様だ
ふたたびフルオープンとなったS800。外板にリフレクターを加え、安全性能を高めた
1960年代当時の軽自動車規格(全長×全幅=3000mm×1300mm)で開発されたスポーツ360(S360)。ややリアまわりに寸詰まり感がある。インテリアは英国オープンスポーツカーの雰囲気が漂うデザイン
エンジンは356ccの排気量をもつAS250Eユニット。当時、空冷2ストローク2気筒が主力だった軽自動車に直4DOHCエンジンを積んだ
ホンダSシリーズは並べてみると違いがよくわかる。それぞれの特徴を見比べてみてほしい
S500のインパネ。無駄のない機能性重視のデザインでありつつ、イギリススポーツカーの影響が感じられる。カラーはブラックのほか、鮮やかなレッドが用意された
4速MTはショートストロークで小気味よいシフト操作が可能。センターコンソール付近は毛足の長いカーペットのような素材が敷き詰められており、ゴージャスな雰囲気を醸している。この仕様はS600以降には引き継がれず、S500のみだった
2+2のお手本のような無駄のないシート形状。シートはバケットタイプでリクライニングはできない
フロントウインドウ上部に装着されるディフレクターは、走行中の風の巻き込みを軽減するためのもの
OHVが主流の時代にオールアルミの直4DOHCエンジンを搭載。しかもキャブレターは1気筒1基の計4基。設計思考がまさしくオートバイだ。レッドゾーンは9500rpmで、スピードメーターは160km/hスケール
フェンダーミラーは控えめな円錐形。こんなにコンパクトながらも視界は悪くない
左側にある軸(ドライブシャフト)からの駆動力をアルミケースの中にチェーンでタイヤの軸に伝達。このケースをトレーリングアームとしたサスペンションだ
S600の内装。ウッド調3本スポークのステアリングやシルバー基調のインパネ周辺の雰囲気は継承しつつ、こまかく修正されている
パッセンジャーシートは可倒式となり、スペアタイヤも収納場所が変わったため、居住スペースの居心地が改善されている
ダッシュボードにちょこんと乗ったルームミラーが特徴のひとつだ
今はもう見かけなくなったシートベルト収納ポケット。2点式シートベルトを、使わない際に丸めてしまっておくためのもの
エンジンは、排気量を791ccに拡大したAS800E型DOHC。ついに100マイルカーの仲間入りを果たした
フィラーキャップはハッチバック化とともに運転席側リアクオーターピラーに移された
S600の内装。ウッド調3本スポークのステアリングやシルバー基調のインパネ周辺の雰囲気は継承しつつ、こまかく修正されている
4速MTもフルシンクロになり、ショートストロークの小気味よさはそのままに、扱いやすくなった
スピードメーターは200km/h表示。タコメーターのレッドゾーンは8500rpmからとそれまでのモデルより低い
シートは基本的に変更されていない。2人乗りだが、1人で爽快なドライビングを楽しめるように助手席側を覆うカバーも用意されていた
791cc直4DOHCエンジンは、S600のものと比べてボアもバルブ径も大型化している。最高速度は160km/hへと達した
運転席側のボンネットにはパワーバルジの膨らみがあるのがS800の特徴だ。「この中に懇親のDOHCエンジンが搭載されている!」と、ファンの期待を高めた
これまでの丸いテールランプから一転、角張ったタイプに変更されたリアコンビランプもスタイリッシュに変更